キーラナイトレイについてよくわかる本!キーラナイトレイでおなじみのルイス・サッカーの本です!
穴
ルイス・サッカー
講談社 刊
発売日 1999-10
「悪い子には穴を掘らせよ。かんかん照りの中で毎日作業すればいい子になる」
そんな教育理念がまかりとおるキャンプ・グリーン・レイクの少年院。でもその実情は地名とは大ちがい。幸せそうにキャンプしている人などどこにもいないし、湖だって1つもない。かつては「テキサスでいちばん大きな湖」があった場所も、今ではひからびた湖底が果てしなく広がる不毛の地なのだ。そこでは日々、少年たちが「性格を治す」ための穴掘り作業を延々と続けていた。
そこへやってきたのが、前から読んでも後ろから読んでも同じ名前のスタンリー・イェルナッツ(Stanley Yelnats)。無実の罪で捕まり、刑務所よりはましだろうとこの少年院行きを希望した少年だ。なにしろイェルナッツ家は代々運に見放された家系。それもこれもみな、「あんぽんたんのへっぽこりんの豚どろぼうのひいひいじいさん」のせいなのだ。そう信じて育ったスタンリーは我が身の潔白を証明しようともせず、あきらめ顔でキャンプ・グリーン・レイクの穴掘り作業に参加する。
だが、そこでは予想以上に厳しい生活が待っていた。起床は夜明け前、きっかり1.5メートル四方の穴を来る日も来る日も掘り続ける毎日。過酷な集団生活(あの『蝿の王』に負けないくらいシビアな生活なのだ!)にもなじまなくてはいけないし、ガラガラヘビの毒液をマニキュア代わりにしている残酷な女所長の恐怖にも耐えなくてはいけない。だが、ある日スタンリーは気づく。穴掘りをさせられるのは「根性を養うため」だけではない。あの女所長がなにか特別なものを探しているせいなんだ、と。この風刺の利いた物語はそこから意外な急展開を見せる。
本書は実に風変わりな物語。だが不思議な魅力にあふれ、思わず引き込まれてしまうおはなしだ。ルイス・サッカーは淡々とした控えめな表現で、奇妙な設定に真実味をもたせ、「絶対に勝ち目のない理不尽な状況」を見事に描ききっている(あの『キャッチ22』に負けないくらい危機的状況なのだ!)。しかし、本書につづられるのは皮肉めいたユーモアと不条理だけではない。その根底には、友情と社会的弱者に対する温かい思いやりが感じられる。このあとスタンリーは知らず知らずのうちに現在と過去の2つのなぞ解きに挑戦、あっと驚く結末へと読者を導いていく。悪運をはねのけようとがんばるスタンリーに、そしてこの世にいるすべてのイェルナッツの末裔たちに、思わず声援を送りたくなってしまう傑作。
テンポが良い 2006-05-16
この本のおもしろいところは、現在のスタンリー(主人公)をたどりつつ、時を越えてひいひいじいさんのことなどが少しずつ重なり合い、話の結末へと繋がっていくところ。運命を笑い飛ばし、しっかりと受けとめれば、きっといつかはいいことがある!元気になれる1冊。
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